こんにちは、Mi6代表の川元です。
僕が大企業を飛び出して起業してからもうすぐ2年が経ちます。
会社としては多くの方々の支えのお陰でなんとかやっていますが、その道は困難の連続でした。
そんな一人の起業家としての実体験をリアルタイムで伝えることが起業を考えている人の何かの役に立てればと思い、この記事を書くことにしました。
テクニカルなHow Toは以降の記事でお伝えするとして、本記事では精神面でのエンジンとなるマインドやエピソードを中心にお話したいと思います。
起業前夜
起業する前、僕はメガバンクで法人営業の仕事をしていました。
簡単に言うと企業に対してお金を預けてもらって(預金)、貸し(融資)、流通させる(為替)仕事なのですが、日々全力投球するもののなかなか目標を達成できない時期が続きました。
特に中堅として責任も重くなってくる入社4年目から7年目くらいが最も苦しい毎日でした。
会社として稼げる手段を考え、狙いを定めて営業を仕掛けていく。
最初に立てた仮説は大体失敗するので、新たな仮説を立てて何度もぶつかっていく。
お金(売上)に直結する動きをしたいと焦る心とは裏腹に、取引先の経営状況が悪化し、守りの対応が多くなっていきました。
守りの時間が多くなると、攻めることに時間が使えない。
その少ない時間の中で目先の自社の利益だけを追い求めても相手には響かない。
結果が出ないと自己の存在意義が乏しい。
周りに迷惑をかける。
ーそんな悪循環が続き、長く暗いトンネルの中にいるような状態でした。
・・・
そんな中、状況が一変する出来事が起こります。僕がずっと支え続けた会社が復活し、大きな企業を買収することになったのです。
結果として、それまで達成できていなかった8年分の目標以上のものを最後の1年で稼ぐことができました。
長く苦しかったトンネルを抜けて振り返ってみると、目の前の相手にとって価値あることをやり続けたことが、長い目で見て結果に繋がったのだと実感しました。
僕の周りでも”今自分がいる場所”に苦しんでいる人がたくさんいます。
僕もそうでした。
ただ、今いる場所にはきっと何か縁があり、意味があります。
目の前の相手にとって役に立つことを地道に続けていればいつかきっと山の頂きに登ることができます。
山は登る時が一番苦しい。
けれども、その先にはきっと素晴らしい景色が見えるはずです。
僕は前職で山を登るのに8年もかかりましたが、自分にとっての山を登りきったことで、”起業”という次の山を見つけることができました。
お金がないと走れない、ただ、ハートがないと起業した意味がない
「何のために起業するのか?」
起業する上でこの問いが最も大事だと僕は信じています。
僕が好きな答えは「心が動くから」ということです。
僕の場合は2014年6月、メガバンクの営業マンとしてあるベンチャー企業に飛び込みで訪問したのが全ての始まりでした。
そのオフィスで僕の目に飛び込んできたもの ―そこで生き生きと働く人たちの様子や企業が急成長する際に生まれるプラスの空気―は、それまで触れたことのないようなエネルギーを放ち、僕の脳に大きな衝撃が走りました。
「なんて楽しそうに生きてる人たちがいるんだ!!」
まるで長い眠りから目が覚めたような感覚を覚えました。
そこからベンチャーという生き方にどんどん惹き込まれていき、2年の準備期間を経て起業することになります。
僕に偶然訪れた”人生が変わる瞬間”を再現したい。
― それが僕の起業の純粋な動機です。
Dropboxの創業者が行った卒業スピーチの話がそれを良く例えています。
ドリューは「人生のテニスボールを見つけよう」と言っています。
犬とテニスボールで遊んだことはありますか?
彼らはテニスボールを見せるだけで興奮し、投げると一直線に追いかけていく。
これが幸せに成功している人の姿なんですと。
頭で考えて打算で動くのではなく、「心が動く」から楽しいし、気がついたら成功しているというものだと僕は考えています。
この点、僕は「心が動く」ことに忠実に起業し、走ってきました。
一方、当たり前の話ではありますが、「お金」が無いと生活ができないし、会社を運営していくことができません。
起業家にとって、「お金」はガソリンのようなものです。
ちなみに、僕達は創業資金を代表者の自己資金で賄いました。
そして、起業するとお金が尽きそうになるタイミングが必ずやってきます。
そこで事業の根本に立ち返ることになるのですが、僕達のケースでは「理想」だけではやっていけないということでした。
僕は無くなって初めて「お金」の必要性を強烈に再認識しました。
苦しい時に岐路が訪れる
1年と少し前のことです。
起業して資金が一番苦しい時にエンジェル投資家の方にお会いしました。
前述の通り僕はもともと外部からエクイティ(株式)で調達する気はありませんでしたが、そのエンジェルの方に何度も誘われ、話をするうちに「そんなにうちのビジョンに共感してもらえるなら出資を受け入れるのも選択肢かもしれない」と思うようになりました。
そして、資金繰りが一番苦しいタイミングで出資をもちかけられ心がぐらつきました。
最後の最後で根本的にベクトルがずれていたことに気がつき、投資を受ける結論には至りませんでした。
あの時出資を受け入れていたら、事業の比重が「お金」に偏ってビジョンがブレていたのではないかと思います。
(その投資家の方が悪いというのではなく、方向性が違うからという意味で)
資金調達で最も肝心なのは、未来へのベクトルが完全に一致する投資家から調達を受けることだと改めて学びました。
一方で、今まで投資する側にいた僕にとって、投資を受ける側の気持ちが分かったことは大きな経験になりました。
会社存亡の危機に投資してくれた5社の企業
そして、残りのキャッシュが2ヶ月しかなく、会社を続けるかどうかの瀬戸際に立たされました。
社運を賭けて営業をして回ったところ、まとまったお金をユーザーとして投資してくれると、5社が名乗りを上げてくれました。
そのお陰で首の皮一枚繋がって事業を継続することができましたが、その時はまだ「理想」の状態から抜け切れておらず、ある種生き延びたけど「現実」に着地できないようなふわふわした状態が続いていました。
そして、2016年の年の瀬になって、「理想」100%は諦めて「現実」も10%受け入れることにしました。
今は「ハート:お金」のバランスを「90:10」くらいで運営するようにしています。
まだまだ低空飛行ですが、ここにきてようやく会社の経営が黒字化し、次々と価値が生まれるようになり、成長の土台が築けたと思えるようになりました。
元取引先とのエピソード
前述の僕達の会社を救ってくれた5つの企業の一つに、僕が銀行員時代に担当をしていた取引先があります。
僕が起業したことを聞きつけたのか、昔の取引先の社長であるYさんからFacebookで急に連絡が入りました。
「起業したのに顔を出さないなんて不義理じゃないか」
正直びっくりしながらも、すぐにお会いしに行きました。
ちょうど1年と少し前で、会社存亡の瀬戸際というタイミングでした。
「事業の内容を教えてよ」
と仰るYさんに僕達が描く事業の未来を語ったところ、
「1年間契約するので請求書を送ってください。」
と思いもかけないお言葉を頂きました。
そして1年後、別件でYさんにお会いしたところ、
「そろそろ1年契約の期限が来るでしょう。また請求書出しておいてください。」と言われました。
なぜそこまでご支援くださるのかと聞いたところ、こう返ってきました。
「正直、うちで一緒に働いてくれたらという想いもある。ただ、とても価値のある事業にチャレンジしているから応援したいし、実際弊社もその事業によって価値を得ている。出資でもいいけど、金銭のリターンどうこうより売上が立った方が良いでしょう?」
それを聞いた時僕は、「事業をきちんと成長させて、恩返しをしたい。そして、社会に恩送りをしていきたい」と心に誓いました。
起業して二度目のサービスピボットへ
先日、ユーザーであり、マーケティング分野の経営者である方から会食の場でこう言われました。
「実は君たちの事業のビジネスモデルを考えてきたんだ。」
そして、1枚の絵を提示されました。
その方にとって直接売上に繋がることではないはずなのに、ここまでしてくださったことに心が動きました。
そこに書かれていたことが、あまりに腹落ちする内容だったため、現在そのアイディアに沿ってビジネスモデルの再構築を進めています。
まさにアイディアという無形の投資を受けたのです。
起業して以来、マイナーチェンジも含めて多くの試行錯誤をしてきました。
しかし、それは僕達の会社だけのものではありません。
一人一人のユーザーが「一緒にこのサービスを良いものにしていこう」というLet’sの精神の下、ユーザーの輪の拡大やこういったアイディアの投資をしてくださっています。
もはや、僕達が生み出したこのサービスは自社だけのものではありません。
仲間が見つかる
一人でできることは限られているから、挑戦しようとすれば自ずと仲間が必要です。
自分が見つけたテニスボールがはっきりしていれば、きっと自然と周りから共同創業者との縁がもたらされるはずです。
僕の場合は大学時代に住んでいた学生寮の後輩が後の共同創業者を紹介してくれました。
僕達の会社は創業準備中に6人でスタートしましたが、チームの解散も経て結局起業する時点では2人に減りました。
しかし、ベクトルがバラバラの6人と完全に一致した2人では圧倒的に後者の方が強かったといえます。
その際、大事なことはなんでしょうか?
相手の給与、スキルセット、資金、年齢・・etc
いいえ、それよりもっと大事なことがあります。
1にベクトル。2にベクトル。3にベクトルだと思います。
起業すると、困難の連続です。
何度も到来する大きな壁を乗り越えていくためには、その事業を心からやりたいと思っているかどうかが最も重要だと思います。
実は、その共同創業者がこの4月末で会社を卒業することになりました。
人はずっと一緒にいれば良いものではなく、必要な時に一緒になり、時に離れ、またくっついたりするものです。
彼なしでは僕は起業していなかったし、2人でなければここまでの土台を作ることはできなかったと思います。
感謝と共に、2人それぞれ新しい道を歩めればと思います。
そして、必要なタイミングできっと新しい仲間が見つかると信じています。
※ちなみに、その共同創業者はフリーランスとして僕達の会社の支援もしつつ、独立して案件を受けていく予定です。エンジニアリソースが必要な方はご連絡下さればお繋ぎします。
最初はHP制作などの工数が比較的少ない仕事でスタートする予定で、システム開発などを引き受けるのはしばらく後からというイメージです。
言語はメインがJAVAですが、C*、Python、PHP、HTML、CSS(デザインも可能)辺りです。
(ご連絡したいという方はこちらまで「mi6@mi6.co.jp」)
なぜ続けられているのか
僕達のサービスは当初マッチングシステムで始まったのですが、残念なことにマッチングシステムはユーザーにほとんど利用されていません。(←とても残念ですが 笑)
また、Webアプリの形式でインターネットを利用しているのに、顧客獲得の入口で全員対面でお会いするという一見非効率な取り組みをしているサービスです。
起業当初に描いた柱が折れ、一見非合理的な顧客獲得方法を続けている。
こんな取り組みがなぜ2年間も続けられているのか?
肝心なポイントはスタートアップ思考でいうところの「やらないことを決める」という点だと思っています。
僕達は新規顧客獲得において「営業すること」をやめています。
その代わり、見込み顧客と必ず1対1で僕がお会いすることにしています。
見込み顧客にお会いした時に、「営業」はしないのですが、その分サービスビジョンを全力で語ります。
そして、相手にも個人としての生き方を語ってもらう。
そうすると、自然とサービスに入りたいというお言葉を頂くことがあります。
頭で考えて動くのではなく、心が動いてビジョンに共鳴するから入会する。
この、ある意味究極的な顧客獲得方法が人と人の深い繋がりを生み出すKEYとなっています。
そして、システムマッチングではなく月に2,3回開かれるユーザー限定のパーティーで他のユーザーと出会う。
そして、同じベクトルを目指す人同士が生き方を語るレベルで深く重なり合うと、想像を超える価値が生まれてきます。
起業当初に想定していたマッチングシステムという手段は失敗してしまいましたが、
「人と人がとてつもなく深く繋がる」という目的には、道を変えて到達できた。
ユーザーにとってこのサービスでしか得られない何らかの価値を生んでいる。
だからこそまだこのチャレンジを続けていられるのだと思います。
起業するには何が必要か?
改めて、この問いに立ち返って答えていきましょう。
1.「心が動くこと」が見つかること
2.ベクトルの一致する仲間(ユーザー、投資家含む)と出会うこと
3.価値を生み続けること
この3点に尽きます。
「お金」を敢えて入れなかったのですが、それは特に3.価値を生み続けていれば結果としてマネタイズに繋がるという想いからです。
いかがでしたか?
起業する上で、マインド面で重要なことを自分のケースを振り返って書いてみました。
これから起業を考えている方々の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
最後に宣伝をさせて下さい。
改めまして、弊社では、起業家と心に火のある大企業ビジネスパーソンが仲間となる「X-エックス-」の運営を行っています。
X-エックス-とは?
”世界を変える仲間とツナがる”をコンセプトにしたギルド。
大企業とベンチャー企業が個人レベルで繋がり、仲間になる招待制の超企業コミュニティ。
完全招待制のコミュニティとなりますが、下記Facebookアカウントへメッセージを頂ければ、代表の川元が気軽にご説明させて頂きます。
若しくは、月1回ペースでイベントを開催しており、極僅かですが席を一般開放しております。
「日常を離れて本来の生き方について考えたい」という方がいらっしゃればぜひお待ちしております。