Atsuko Miyashita
大手電機メーカーの海外営業、広報を経て独立。アメリカ在住。
幼少期と大学時代をイギリス・ドイツ・ブラジルで過ごした経験から、比較文化に強い関心を持つ。
2016年12月よりエックス会員。Xブログ運営の主要メンバーとして携わる。
http://matching-project-x-blog.com/
この記事は、X-エックス-が2月に行った上海の視察から学んだことをまとめたものです。
他者を知ることで、自らを振り返る。
そのためのヒントになればという思いから、異文化についてのさまざまな考察をお届けしています。
前篇(上海の衝撃(上) )では、IT技術の急速な進化が中国の人々の日常をどのように変えているか、現地からのレポートをお伝えした。
その後のイベントも含め感想をいくつかいただいたが、中心となったのは「中国が遥か前を走っているように見える」衝撃だった。
さらに存在感を増す中国企業
フォーブス誌によると2017年の企業ランキング(売上、利益、資産、市場価値の加重平均)トップ10のうち、1位と2位を含めた4社が中国の企業だった。
ここ数年このような傾向が続いているため、この結果についてはさして驚かない方も多いかもしれない。
たしかに上位は銀行・インフラ会社が占めるため、業種を超えて比較するのはちょっとミスリーディングな気もする。
では、前篇で話題となったITソフトウェア会社で絞るとどうだろうか。
アメリカの旗が並ぶ5位までに目が奪われてしまうが、血みどろの戦いのこの分野で中国も6位と10位に食い込んできている。
前篇で取り上げたWeChatを運営するTencent集団については、全業種を通じてのランキングが去年201位から148位へと大きく躍進。
ITソフトウェア会社の中では企業の経営を効率化するERPパッケージで世界一のSAPを抜き、Facebookの下につけた。
ちなみにWeChatと同様に中国の電子決済革命でトップをいくAlibaba集団は、領域が広すぎるためかITではなくBusiness & Personal Servicesにカテゴライズされ、全体ではTencentの少し上の140位。
こちらも去年の174位から大きく順位を上げた。
WeChatと同様チャットアプリを運営する私たちにおなじみのLINEはトップ2000内に入っていない。
LINEが中国で普通に使えていたらどうなったのだろうとも思う。
中国政府はその影響の大きさを十分認識したうえで、GoogleやFacebook, twitterなどの世界のITサービスを規制していると考えられる。
中国のIT企業が健闘している理由には、政府のえこひいきと捉えられかねないような介入がある。
そしてそのように国内産業を保護するというビジネスの観点とともに、思想統制という政治の観点もある。
ネット上の駆け引き
―憲法改正が引き続き大きな争点となっている日本。
議論が過熱する中、中国ではすごいことが起こった。
新たな習近平体制の強化が強調された第19回中国共産党大会から4か月余り。
習近平氏は、自身の国家主席としての任期を「2期10年まで」とする憲法条文を削除する改正案を発表した。
事実上の長期政権化宣言である。
中国のSNSでは、それが「歴史の後退」であるという意味を込め、車をバックさせる動画が出回った。
その後やはりウェイボー(中国語版ツイッター)では「バック」という言葉の検索に制限がかかった。
「賛成しない」「海外移住」などのリアルなワードも対象となった。
「クマのプーさん」も。・・そう、あの人に似ているということで比喩に使われてきたからだ。
こうしたSNS上でのいたちごっこは、私たちに「不満を持つ国民とそれを抑えようとする政府」という構図をイメージ付ける。
またGoogleやFacebook等が使えないなどネットがらみの事情を見ると、それらが生活の中心となっている私たちは、中国がひどく抑圧された社会だという印象を持たずにはいられない。
実際のところ、当の国民はどう感じているのか。上海在住の中国人たちに聞いてみた。
集約すると
みんな不満がないわけでもないけど、声を挙げるほどのことでもない
そうだ。
信頼する友人同士では不満を漏らすこともある。SNSでは皮肉ったりもする。
しかし、基本は右肩上がりの経済成長の中、事を荒立てるほどのことではないようだ。
実はネット上のこれらの規制には抜け穴がある。
上海在住の私の友達は、禁止されているはずのFacebookでよく連絡してくる。
海外からの情報がすべからくシャットアウトされているわけでもなく、国民は世界の常識と照らし合わせながら客観的に自分たちの政府を見つめる余裕もある。
規制の状況は日々変動するものの、それらの網をかいくぐることは基本そんなに難しいことではない。
しかし、世界最高峰のセキュリティを誇るグレートファイアーウォールを持つ中国のことである。
その気になれば、いくらでも穴は潰せるはず。
それでも実際潰さないのは、そのように敢えてしているのだと思われる。
推測にすぎないが、徹底的に抑え込んでしまうことのリスクも見据えているのだろう。
手の中に収めながらも、決して握りつぶさず、意外にふんわりと転がしているのだ。
84%が「政府を信用する」!?
米国大手PR会社・エーデルマンが行った最新の調査によると、中国で「政府を信用する」のは驚異の84%で28か国中トップだった。
37%の日本とは比べ物にならない高さだ。
実際に上海に住む人に聞いても、周りはみな政府の政策執行力については絶大なる信頼を寄せているそうだ。
「政府関係の人たちはとにかく優秀」というのはいろんな人たちの口から聞いたという。
私自身、上海に長年駐在する日本人からもこの言葉を聞いた。
そこに思想統制がどのくらい影響しているかはわからないが、この数字は他の国を見てもなかなか得られるものでないことは間違いない。
前述のような規制や今なおはびこる汚職については国民も承知しているはずなことを考えると、やはり右肩上がりの経済が大きいのだろうか。
政府に対する不満の度合いについて、都市部のお金持ちとその他では間違いなく差があると思う。
私が今回話を聞くことができたのは、中国の中でも数%の富める人たちであることは否定できない。
そして中国では大きな貧富の差が存在することも疑いようもない。
1%のトップ層が国の富みの3分の1を握っているのが実態なのだから。
次回は、「金儲けは善」となった中国と「主張文化」についてお話しします
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